谷口輝世子Kiyoko Taniguchi

米国在住のライター。日本ではスポーツ紙の記者をしていました。スポーツ取材が中心です。

『終わりなき旅の終わり』かんそう文

 近藤さんの『遊牧夫婦シリーズ』最終巻を読んだ。

 

終わりなき旅の終わり さらば、遊牧夫婦

終わりなき旅の終わり さらば、遊牧夫婦

 

 

 前の2冊よりも、もったいないことに、短い時間で読んでしまったと思う。

 この3巻目は、近藤さんご夫婦がひとつの場所に長く滞在されている場面がそれほど多くないため、読んでいる私も、旅を追いかけて、つい読むスピードをあげていたようだった。

 2章目の『聖地と極寒』がとても楽しかった。

 私の住むミシガン州デトロイト郊外は、冬はそれなりに寒いところで、マイナス20度くらいまでは気温が下がる。

 当たり前だけど、そんな寒い日には歩行者はほとんどいない。(大学街などには歩行者がいる)でも、かなりおかしい私は膝までの雪をかき分け、図書館、銀行、郵便局へ歩いていることがある。子どもを連れてあるいていたときには、車を持っていない外国人の親と、かわいそうなその子どもたちと見えたらしく、横を走る自動車が停止してくれて「この車に乗って!家まで送るから」などと親切にも声をかけていただいたことも何度もある。

 それでも私は性懲りなく雪道を歩く。なぜか、そのときに浮かぶのは映画の「八甲田山」か、テレビの「北の国から」ばかり。ここ数年、これとは違うイメージを浮かべて歩いてみたいと思っていたところだった。

 そこで出会ったのが、この本。

 近藤さんたちが長時間のドライブ、高山病に苦しみながら、たどりついた場所はカイラス巡礼の拠点。チベット人ならば1日で歩ききるという52キロの道のり。白い雪道をすすんでいくと、川をわたらなければいけないところに出てくる。石を投げて「インスタント橋」を作ろうとする近藤さん。30分ののちに奮闘の甲斐むなしく、足が水につかってしまった近藤さん。しかも、スニーカーって書いてある。ええ、スニーカーでそんな寒いところを歩いていたの?濡れた足の冷たさと吹雪のなかを歩く近藤さん。身の危険も感じる状況。

 いくら寒くても、すぐ横には道路があり、自動車がたくさん走っている道を歩いている私は、雪や寒さで「身の危険」を感じたことはない。(たまに車がスリップするので、それに巻き込まれないようにはかなり注意している)。ついでにいうと、私の目的地は図書館であり、銀行であり、スーパーであって、聖地でもない。しかも距離は軟弱な片道2キロ、往復4キロコースである。

 でも、この冬は、「カイラス」を思い浮かべ、横を走るドライバーたちの不審な視線を感じながら、ガンガン歩きたい。(スニーカーではなく、ちゃんと雪道用の靴は履いてます)

 ご夫妻は出産のタイミングなども考えて、日本に定住される道を選ばれた。

 20代から30代のはじめにかけて旅をするということは、エネルギーも悩みも、こういうよさがあるよなあと、しみじみ思う。しかも、ご夫婦で旅をされた。

 うちは8年後に下の息子が高校を卒業予定(留年したらどうしようか)。今、始まりなき、旅の始まりのイメージトレーニングをしている。私の頭の中では夫は私の帰るべき場所にいてくれるはずになっていて、いっしょに旅をしている様子は想像できない。

 290ページと298ページについては、今度、近藤さんにお会いする機会があったら(それは、もしかしたら京都や大阪でなく、イスタンブールじゃないかと思っている)、もう少し詳しくお話を伺いながら、私の仕事上の悩みも聞いていただきたいなと、大変、わがままな願望を記して、このかんそう文を終わらせていただきます。