ミゲル・カブレラと障害児野球 史上最良の打撃投手か。

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今シーズンは、過去2年に見せた史上最強打者級の活躍をしていない、タイガースのミゲル・カブレラ内野手。

なぜ、彼がこれまでほどの成績を残していないかは横においておきまして、今日はカブレラと障害児野球教室の模様をレポートしたいと思います。

タイガースは毎年、デトロイト郊外にあるミラクルリーグという障害児野球のリーグで野球教室を開催しています。日本のプロ野球ではちょっと考えられないかもしれませんが、シーズン中の試合のある日にやります。

このミラクルリーグは、通常のフィールドの約三分の一ほどの大きさで、全面特殊なゴム張りです。足が不自由な子どもたちや車いすの子どもたちが多いので、芝の球場だと、走るときや車いすで移動するときに、芝がひっかかってしまうのです。このような球場はだんだんとアメリカ中に広がっているとのこと。

いつも、まえがきが長いですが、今日もここからが本題。

私も3年前から、障害児野球リーグでタイガース選手による野球教室の様子を取材するようになりました。タイガース側からは、だいたい投手1人と野手1人と、トレーニングコーチなどのコーチら3、4人が参加して指導します。

カブレラだけ3年連続です。2012年に初めて取材にいったときは、まだ、障害児野球の運営者さん、タイガースのイベント担当職員さんにも、ちょっと緊張が走っていたように感じました。スーパースターのカブレラに対して、どこまで、何をやってもらえばよいのかってことで。

カブレラはここ3年、子どもたちに対して打撃投手役を務めています。

2012年は、ミラクルリーグのコーチがカブレラに気を使って「カブレラに3球投げてもらって、打てなかったら、一度、ベンチに戻りましょう」というような内容を伝えていたのです。

そうすると、3球三振してしまう子どもがいるのです。ああ…と思って見ていると、カブレラが「ワンモア!ワンモア」といって、ボールがバットに当たるまで投げ続けたんですよ。どの子に対しても。

そのときには、今度は運営者側のコーチ陣が、どうしてもタイミングの合わない子にはバットに手を添えて打ちやすいようにサポートするようにしていました。コーチ側には、あんまり投げてもらっても悪いなあというカブレラに対する遠慮のようなものがあったような感じがしました。私には

昨日、野球教室の取材にいったら、カブレラ自身も、運営する側のコーチも子どもも最初のあいさつのときからノリノリなんです。お互いにとっても気ごころが知れているんです。カブレラは紹介の音楽がかかったら、いきなり手をたたいてリズムとっていましたし。しかも、ナイター明けの翌日の朝10時でのこのテンションですから。この後は球場へ行って自分の試合があります。

昨日のバッティング練習は、障害児野球のコーチも、どの子もヒットを打てるまでカブレラに投げ続けてもらう、ということでやっていました。打撃投手のカブレラへの信頼があるからです。

マウンドからホームも通常の三分の一程度の距離でして、子どもたちは、ミラクルリーグのコーチが考案した、打ちやすい巨大ヘッドの超軽量バットを使用しています。

それでも体に障害を持つ子どもたちにとっては、バットでボールをとらえることは簡単なことではありません。ボールが自分の前を通り過ぎた後に、ゴルフのようなスイングになるなど、どうしてもタイミングがとれない子どももいるのです。

そうすると、今度はカブレラはぐっとバッターの方まで近づいてくるんですね。別に誰が頼んだわけでもなく。そしてソフトボールのような下手投げに変えるのです。タイミングが全く取れない子どものスイングに合わせて、カブレラがタイミングをあわせて、ちょっと長めのトスを上げているような感じです。

バットにボールが当たるんですね。やっぱり、うまいなあと思いました。全くタイミングのあっていない子に、5、6球投げただけでバットに当たるようにしていましたから。

どの子もヒットが打てると、喜びを全身で表現して一塁ベースへ向かって走っていくんです。カブレラがその様子にとても満足そうで、その子どもたちの喜びが、そのままカブレラの喜びになっているようでした。

もちろん、カブレラでなくても、一定の技術を持った人だったら、子どもがバットでボールを打てるようにできるでしょう。でも、あのカブレラから、自分はヒットを打ったというのはまた、格別なようでした。

ここに来ると、みんながとても楽しそうなので、私も野球ってこんなに楽しかったんだと感じます。私が今のところでは、一番、好きな取材です。