米国生まれの3つのスポーツ。野球、アメリカンフットボール、バスケットボール

今月は『The Meaning of Sports』という本を読んでいました。

中村敏雄氏の書かれた本がお好きな人は、とても楽しめると思います。難解な英単語もありませんので、米国のメジャーリーグ、アメリカンフットボール、バスケットボールに関心のある人には読みやすいと思います。

『オフサイドはなぜ反則か』(中村敏雄著)

『スポーツの風土』(中村敏雄著)これと重なっている部分もあって、私は2人の著者の同じような感じ方に出会って感激しました。

 

 『The Meaning of Sports』には、米国生まれの3つのスポーツが取り上げられており、その競技の特性、歴史背景、現在の状態について書かれています。

1、野球 昔をなつかしむもの。

  野球はご存知のように9イニングを終了したときに得点の多いほうが勝ちになるゲームです。時間に制限はありません。

 塁間やマウンドからホームベースまでの距離は決まっていますが、球場の形そのものはさまざま。メジャーリーグの球場でも右翼にグリーンモンスターのあるレッドソックスの本拠地フェンウェイパークがあり、アストロズの本拠地球場ミニッツメイドパークの外野部分にはあえて小さい盛り上がり部分があったりします。

 シーズンは春から秋まで。春に始まり、秋の収穫で終わるという農作業シーズンと同じです。

 時間無制限、任意のフィールドで春から秋にかけて行われる。現代人は、常に時間を管理し(時間にせかされ)、気候などの外的条件のコントロールされた場所で働くことが多いので、野球そのものが古きよき昔をなつかしむものになっています。

2、アメリカンフットボール   暴力の見世物

  アメリカンフットボールは野球と違い、時間制限があり試合をするフィールドの大きさはどこでも同じです。野球やバスケットボールと違うのは、激しいコンタクトのある競技だということ。ルールの範囲内で制限つきではありますが、体がぶつかり合う荒々しいプレーが人々を引きつけてきました。

 それに戦争とも似た要素を持つことも指摘されています。自分のチームと相手のチームの陣地があること。コーチ=参謀であり、コーチが作戦を立てて、選手はその作戦通りに動かなければいけないこと。これは、プレーが一時停止する場面が多くあるので、コーチの作戦によって選手が動くことが可能であるとも言えます。また、深刻なケガが起こりやすいことも戦争で起こることとよく似ているといいます。

3、バスケットボール    チームワークの化学作用

バスケットボールはもともと冬場のレクリエーションのために「作られた」スポーツで、この3つのスポーツのなかでは唯一、最初の試合が行われた日がはっきりと分かっています。試合は屋内の体育館、アリーナで行われ、自然環境に影響されることもありません。また、野球やフットボールに比べて必要なスペースが小さいことから都市のスポーツであるとしています。野球やアメリカンフットボールに比べるとプレーが一時停止している時間が少なく、攻守交代の間もプレーがとまりません。そのためコーチ(監督)の作戦を選手がそのまま実行するというよりも、コートの中にいる選手たちの動きによって、試合がすすんでいきます。

3つのスポーツとも20世紀に発展したものですが、時代の変化とともに新しい問題にも直面しています。

 この本が書かれたころには、導入されていなかったのですが、メジャーリーグは今季からビデオ判定をはじめました。今の時代にあうように、テクノロジーを利用したルールに変更しなければならない、スピードアップもしなければ忙しい現代のファンにはそっぽを向かれてしまいます。しかし、一方で野球は過去を思い出させるものなので、あれもこれも現代風に変更してしまっては、懐かしさが薄れてしまうという難しさがあります。

 アメリカンフットボールはルールの範囲内で荒々しいコンタクトのあるところが魅力でした。しかし、現在では暴力を忌避されるものであり、暴力的な要素を含むスポーツは好まれなくなりつつあります。ボクシング人気がやや衰えているのも同じ理由かもしれません。この本の出版後に、アメリカンフットボール選手が脳震盪の後遺症に苦しんでいることも明らかになりました。激しくぶつかりあうことで観客をひきつけてきたものから、どのように変化させていくのかが、アメリカンフットボールの生き残りと関係してくると思われます。

 バスケットボールは先に述べた2つの種目に比べると、見通しは明るいとこの本の著者は書いています。なぜなら、女子のバスケットボールリーグもあり、現代に必要な性別を問わずに参加できるスポーツでもあるからです。また、野球やアメリカンフットボールと比べて世界の多くの国々に普及していること。選手間の大きな年俸格差などが今後の課題です。

 20世紀はスポーツが競技として定着し、国際大会が行われて、人々も熱く応援してきました。スポーツそのものの起源には古いものもありますが、競技としてのスポーツは100年ほどしか歴史がありません。本の内容そのものもとてもおもしろかったうえに、22世紀になるとスポーツも大きく様変わりしているのではないかと考えるきっかけになりました。

 また、アメリカンフットボールと戦争の類似していることについては、コーチの権威や体罰問題も私は連想しました。

アメリカンフットボールは米国の大学スポーツとして発展してきた背景があり、教育の現場で若い男性に対し「倒れても立ち上がる」というメッセージを発信してきました。現在、高校運動部活動としてのアメリカンフットボールは、脳震盪や熱中症予防の観点から大きく変化しているように思います。この変化の過程を調べていきたいとも思いました。