父性原理と子どものスポーツ

父性社会 アメリカ
 米国では公立高校でも、とくに団体スポーツに入部するときには、入団テストを受けるのが一般的です。毎年、その種目のシーズン前にトライアウトと称される入団テストを実施します。

 ここで、一軍、二軍に分けたり、人数の多いスポーツ、学校の規模によっては、一、二軍のほかに一年生チームと3種類に分けられます。

 ですので、いきなり、初心者が入団テストを受けても、よほどの運動能力がない限りはチームに入ることができません。補欠でもいいのでチームの一員になるということはまず、できません。日本だと「補欠の選手にも、にこそ重要な役割がある」といった論調になり、全員一丸とか、全体の和が強調されますが、ある米国人のコーチは「試合に出る機会がないのにチームに入れることのほうがかわいそうだ」と話していました。

 一軍は同じ地域リーグの一軍と試合をし、二軍は二軍と試合をします。戦力の均衡を保つため、最高学年の生徒は二軍に入部できないなどの規定があります。

 トライアウトは高校生だけでなく、私の知るところでは野球、サッカー、アイスホッケー、バレーボール、バスケットボールなどの団体スポーツでは小学校低学年から行われています。

 上手な子を選抜してチームを作り、その選抜チームをいくつか集めてリーグを作り、競わせるのです。さらに上手な子を集めたエリート・トラベルというリーグもあります。能力のある選手をより伸ばすシステムが確立されています。他国から優秀な選手が米国にスポーツ留学してくるのもそのためかと思います。 

 選ばれなかった場合はレクリエーションチームか、最寄のYMCAなどの受け皿があります。しかし、上手な子のなかでもまれている選手と、レクリエーションチームの選手の差はなかなか縮まりません。

 そこで、前回述べたようなプライベートレッスンや民間の練習を盛んに利用して時間のトライアウトでリベンジを狙う親と子がたくさんいます。

 河合隼雄さんの著書のなかに母性社会の日本と父性原理の欧米といった分析があります。米国の子どものスポーツにも選ぶ、切断するという父性原理が働いているようです。

 ひとつ付け加えとして。米国では、上手な子を選抜してリーグを作る、そうでもない子の受け皿としてリクリエーションのリーグを作る、隣市のトライアウトを受けに行く、などいくつかの選択肢があります。それはスポーツに関わる大人たちが行動しているからです。リーグを作り、試合をする機会を積極的に設けています。民間もまた、その一端を担っています。