児童書業界も困惑 ステロイド問題
私はアメリカに来たばかりのころ、子ども用に書かれたスポーツの本をよく買っていました。
スポーツ取材のために渡米してきたのですが、英語の分厚い本を読む力と時間がなく、子ども向けの本を読んで一夜漬けの要領で選手の情報を頭に入れていたのです。
野球の本もいくつかの種類があり、日本の児童書ではあまり見かけないホームラン打者列伝といった内容の本もいくつか出回っていました。
私が1998年からの数年間に買った本はマグワイアが表紙になっているものがほとんど。
本の中ではベーブ・ルース、ルー・ゲーリック、ジミー・フォックス、テッド・ウィリアムス、ミッキー・マントル、ウィリー・メイズ、ハンク・アーロン、レジー・ジャクソンと歴代の強打者が紹介されています。
このあとマグワイア、サミー・ソーサ、バリー・ボンズと続きます。
しかし、バリー・ボンズが年間最多本塁打記録を更新してしばらくしてから、ステロイド使用問題が表沙汰に。
1996年MVPのケン・カミニティがステロイド使用してきたことを告白。2005年の下院公聴会ではホセ・カンセコが使用を認めました。
子ども向けの本は、マグワイアをはずして、新しく表紙にしたアレックス・ロドリゲスまでもがステロイド使用を認めたり…。翌年に出版されているものはアルバート・プホルスに変わっていました。児童書の編集者も、さぞがっかりし、忙しかったことだと思います。
以前のように、子ども用の本塁打者列伝もヒーローの賞賛とホームランの魅力だけをつづるだけでは済まされず、ステロイド問題にも触れています。
昨日、図書館で借りてきた本(小学校中学年向けと思われる)には、こんなふうに結ばれています。以下、私が適当に翻訳
将来、最も優れた長距離打者は誰かということははっきりしなくなるかもしれませんが、ホームランそのものは無事のようです。
打者はより強くなり、球場はより小さくなり、ファンは今もホームランを見ることを愛しているのです。
歴史はよい先生で、このケースも心配しなくてもよいことを私たちに教えてくれています。
ホームランは、いつでも野球の最も素晴らしいヒットであり続けるでしょう。
図書館にはこの本の横にマグワイアとソーサが表紙になった「ホームラン・ヒーローズ」という本が並んでいて、書棚のなかで肩身の狭い思いをしているように見えました。