薬物汚染時代とフェアプレー

私は大学時代に、恩師から「フェアプレー」について教えていただいたことを断片的に覚えている。(当時から出来が悪かったので部分的にしか先生の話を覚えていない)

 「フェアプレー」は、スポーツが賭けの対象になるときに必要なものである。そのような内容だったと思う。

 そりゃそうだ。ゲームやレースが始まる前に公平性がないと、勝敗や着順に賭けることはできない。

 正月にふと、メジャーリーグの薬物汚染のことを思い出した。私がメジャーリーグを取材するために渡米してきたのは1998年のこと。

 当時、マーク・マグワイアサミー・ソーサメジャーリーグの年間最多本塁打記録更新を目指して本塁打競争を繰り広げていた。

 しかし、後にマグワイアやソーサ、バリー・ボンズアレックス・ロドリゲスら代表的なホームラン打者がステロイドなどの薬物を使用していたことが明らかになった。

 ステロイドなどの薬物を使用することは選手自身の健康によくないことは明らかで、「フェアプレー」の観点からも許されない。

 私はメジャーリーグの薬物汚染は「過去」と「未来」へ公平を欠いたものだと思う。歴代のホームランバッターと、これから誕生する選手たちと、それからファンに対して「フェア」でなかったと思う。

 歴史の短い米国では、100年以上の歴史を持つプロ野球が「歴史を語る楽しみ」の一端を担っている。

 野球は父が子どもに教えるスポーツとされていた時期が長い。祖父母世代、親世代、子世代と、それぞれの優れた選手を語り合う。記録による比較も他のスポーツよりは分かりやすい。ナマでその選手を見たことはなくても楽しめる。

 「史上最も優れたホームラン打者は誰か」などという話題は、野球ファンにとってたまらないもの。ベーブ・ルース、ウィリー・メイズ、ハンク・アーロンケン・グリフィーJr…。今では、コンピューターを使用して違う時代の選手を対戦させることも可能になっている。
 
 それぞれの時代によって球場やボールなどが微妙に違うから、それは考慮に入れるとしても、選手がこっそり薬を使用して自分の能力にゲタを履かせていたとなると、「史上最強のホームラン打者」の話も興ざめになる。

 薬物を考慮して最強打者を算出することは難しい。相手投手も同様に薬物を使用していたかどうかも考えなくてはいけない。どこかで薬物を考慮して他の選手と記録を比較できるような計算式を編み出している人がいるかもしれないが…。

 間もなく今年も殿堂入り選手の発表が行われる。しかし、薬物使用のためか落選している選手を見ると、何となくむなしい…。そして、何にも考えず、マグワイアやソーサやボンズがホームランを打つのを目の前で見ていた当時の私自身を思い出し、毎年、情けない思いをしている。

 以下は殿堂入り候補のひとり、バリー・ラーキンについての記事。
http://news.cincinnati.com/article/20111231/COL19/312310035/Erardi-Larkin-only-no-doubter?odyssey=mod%7Cnewswell%7Ctext%7CSports%7Cs