このところ、米国のユーススポーツ界では脳震盪がクローズアップされています。
数年前にワシントン州で、脳震盪の症状がありながら、プレーを続行した中学生が突然、グラウンドに倒れ、命はとりとめたものの重い後遺症を残すという出来事がありました。
2009年、ワシントン州では教育現場での脳震盪に関する知識を与えるよう義務付けるなどの法律ができました。わずか4年で、全米40州以上がこれと同様の法律を成立させています。学校スポーツにおいて、脳震盪の疑いがある生徒は医師や医療従事者がOKを出すまで練習や試合には復帰できないことなどのガイドラインもできています。
また、NFLの元選手たちが脳震盪の後遺症に悩んでいることが次々と報道されました。元選手400人が脳震盪の危険に対する注意喚起を怠っていたとして、NFLを訴えてもいます。
ワシントン州のライステッド法とNFLの訴訟についてはこちらにも書かれています。
http://www.nhk.or.jp/worldnet/monthly/year/detail2012_04_141.html
元選手のなかには、10年後、20年後にアメリカンフットボールがなくなってしまうかもしれないということを考えている人もいます。http://espn.go.com/college-football/story/_/id/9387994/lem-barney-says-sees-end-football-10-20-years
米国で最も人気のあるアメリカンフットボールがすたれていくとは、なかなか想像しにくいのですが、この脳震盪問題がクローズアップされたことにより、保護者の間では男児にフットボールをやらせることへの戸惑いが広がっているのも確か。
オバマ大統領も自分に息子がいたら、フットボールをやらせるかどうかよく考えたいようですし。http://espn.go.com/nfl/story/_/id/8886528/president-barack-obama-not-sure-allow-son-play-football
社会、人々の安全への意識の変化が、フットボール界にも大きな影響を与えています。
NFLでも子どもたちや若い年代の脳震盪と後遺症防止に懸命。フットボール離れが起こらないことを願っての動きでもあります。
ルール改正などでアメリカンフットボールがこれまで通りの人気を維持していくのか、ボクシングのように人気が低迷していくのか。
社会が、アメリカンフットボールを安全上の視点からどのように見ていくのか。
日常の仕事のなかでアメリカンフットボールより、ケガの危険がある職場が減っているから、フットボールのケガがよりクローズアップされるようになったのか?
もし、アメリカンフットボールの人気が安全性の問題から衰えることがあるとしたら、米国人の「スポーツにおける男らしさ」についての考え方やイメージも大きく変わっているということだと思います。
学校スポーツにおける脳震盪に関する法律のなかで育っていく子どもたちが大人になったときに、アメリカンフットボールをどう見て、どう楽しむのでしょうか。そのときは、どんなルールになっているのでしょうか。