自由な遊び時間はオーバーユースを防止する。

 先日、このような記事をブログに書きました。

高収入世帯の少年・少女選手のほうが、オーバーユースによるケガをしやすい。 - 『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)

 momsteam というウェブサイトでも、この研究結果をもとにオーバーユースに関する記事を書いていましたので、ご紹介します。

Serious Overuse Injuries Linked To Athlete's Socioeconomic Status | MomsTeam

大人の指導者がいて、練習や試合の日程が組まれているチームやクラブに属している子どもたちが、身体の使いすぎ、燃え尽き状態に陥るのを防ぐには、どうしたらよいのか。確実で分かりやすいのは、練習量を抑えて、過密な試合日程を組まないことです。

では、適度な練習量とは、いったいどのくらいなのか。

もちろん、子ども個人によって違います。

ただ、大人の指導者がいて、組織だったチーム全体で活動する場合は、練習量や試合日程をコントロールする必要はあるのではないでしょうか。

練習量が多くても深刻なケガにつながらない子どももいれば、技術面で優れていても、疲れやすい身体を持っている子どもは、多く練習するほどケガのリスクが高くなるというものでしょう。

この記事では、ひとつの目安として一週間の練習時間が年齢を超えないようにするとしています。例えば、10歳児なら、週に10時間まで。高校生でも週の練習時間が16時間を超えると、深刻なケガをする確率が高まるそうです。

もうひとつ、全体練習やトレーニングの時間は抑えても、子どもが自由に体を動かして遊ぶ時間はあったほうがよいということです。

例えば、ケガをしたユースのエリートテニス選手を調べたところ、彼らの週の練習時間は平均12.6時間で、自由な遊び時間は週に2.4時間だったそうです。一方、同じテニス選手でケガをしていないグループを調べたところ、練習時間は週9.7時間、自由な遊びは週に4.3時間でした。

このことから、調査した人たちは、ガチガチの練習時間は、自由な遊び時間の2倍を超えない程度に抑えるべきだとしています。

自由な遊びが、子どもが熱心に取り組んでいるスポーツを含んでいても、いいのだろうと私は思います。例えば、バスケットボール選手が、誰にも指示されたり、強制されたりしない状況で、家の庭先でちょっとシュートを打ってみるなど。

子どもが友達と広場で野球をしたり、サッカーやアイスホッケーをしているのを観察していて、おもしろいことに気づきます。試合形式で遊んでいても、監督、コーチ、審判もいないので、疲れたら、適当に休んでいます。疲れた子が1人、2人と抜けると、遊びが成り立たなくなるので、別の遊びに変わっていきます。

やりたくないことはやらない、どこか体が痛いときはやらなくていいという条件で、スポーツのようなものをして遊んでいるときは、深刻なオーバーユースによるケガにつながりにくいのではないでしょうか。もちろん、外で友達と遊んでいて、ケガをすることはよくあることですが、それはオーバーユースとは違った種類のものでしょう。

自由な「スポーツ遊び」のなかで、自分の身体の疲れや痛みを感じること。それが、チームやクラブでの全体練習のときにも、子ども自身が「これ以上できない」「これは痛すぎる」と感じる基準のようなものにつながっていくといいのかもしれない、とも思いました。