米国学校運動部 女子マネジャー取材 中間報告

 夏の高校野球のシーズンもずーっと前に終わって、高校野球チームを支えた女子マネジャーたちの話題もすっかり忘れられたころだと思います。

 日本の高校野球部の女子マネジャーが2万個のおにぎりを作り、8月にそれが美談風に報道されたことがきっかけで、性別にかかわらず何かをする機会が平等に与えられていないのではないか、などということがネット上で議論されました。

 この文章も議論のきっかけのひとつとなりました。

 https://note.mu/lingualina/n/n42ec2cba77d2

文章全体で、女性であることによって選手になる機会を制限されていなかったか、男性であることによっておにぎりを握るマネジャーをする機会を制限されていなかったか、と問いかけていらっしゃいます。

 私もアメリカで「運動部 マネジャー募集。女子マネに限る」と応募したら法に訴えることができると考えています。

 この文中に「アメリカには女子マネージャーなるものは存在しません」という一文があります。

 私はこの一文が、日本の読者の人にアメリカには運動部のマネジャーというポジションが存在しない、男子運動部を支える女子のマネジャーはいない、という誤解を与えたくないと強く思いました。近所の高校に女子マネジャーがいることは知っていたので、彼女たちが存在しないかのような誤解はされたくないと思ったのです。

 それ以来、私はアメリカ学校運動部におけるマネジャーについて、インターネットで米国のメディアがどのようにマネジャーについて報道しているのかを調べたり、直接、話を聞くようにしてきました。

 このブログにもその都度、覚書として書いてはいますが、仕事として取材させていただいたお話は、ここには書いていませんので、それも含めて中間報告したいと思います。

 ①アメリカの高校運動部、大学運動部にはマネジャーがいる。「スチューデント・マネジャー」という肩書である。

 ②私が直接に話を聞かせてもらった異なる学校の3人のマネジャーによると、「スチューデント・マネジャー」の仕事の内容は、用具の管理、準備、メンテナンス、選手の水分補給の補助、練習補助が中心で日本のマネジャーとほぼ同じ内容。いずれのマネジャーも対外試合の日程調整やグラウンドの確保などは行っていない。

 ③スチューデント・マネジャーは、男子がなっていることもあれば、女子がなっていることもある。
 今回、話を聞かせてもらった人のなかで、ミシガン州北部の高校で2年前にマネジャーをしていた人によると、その高校のほとんどの運動部マネジャーは女子生徒で占められていたという。
 筆者の近所の高校のアイスホッケー部は、最寄りの高校が女子マネジャー2人、隣接する市の高校は男子マネジャー1人、そのまた隣の高校は女子マネジャー1人、男子マネジャー1人だった。

 ④大学マネジャー。
 ノートルダム大学アメリカンフットボール部のマネジャー経験者と、ミシガン州立大アメリカンフットボール部の現役マネジャーに取材した。どちらも米国大学フットボールの上位にランキングされる名門強豪校で、マネジャーを希望する学生が多い。そのために春季シーズンの練習期間中にマネジャーとしての仕事をしてもらい、そこで適任者であると評価された場合のみ、マネジャーになることができる。評価するのは大学職員でアメリカンフットボールの用具管理部長や上級生のマネジャー。この評価はランキング化され、上位から定員に達するまでをマネジャーとして入部させる。

 07年度のノートルダム大アメリカンフットボールは24人中、7人が女子学生であった。14年度のミシガン州立大アメリカンフットボールはマネジャー14人中、女子学生は1人であった。

 ミシガン州立大で学生マネジャーを評価する側にある用具部長に、なぜ女子のマネジャーがとても少ないのか質問した。「ジェンダーの問題ではなく、チームにフィットする女子のマネジャーがいなかったため」とのコメントだった。

 評価、トライアウト制の能力主義で採用している。仕事の内容が力仕事や男子アメリカンフットボール部の練習補助が中心の場合は、身体的な差により女子は不利になると思われる。

 ⑤このようなトライアウトを勝ち抜き、アメリカンフットボール部のマネジャー長になった場合は、奨学金を支給する大学がある。

 ⑥日米のマネジャーに関する報道の内容には、大きな差はないと思われた。ミシガン州立大フットボール部マネジャーを報じるテレビ番組では、彼らが学生生活を「sacrifice」して貢献している と伝えられた。

 ⑦ミシガン州立大の女子マネジャーとノートルダム大の元女子マネジャーに女子マネージャーとして男子運動部を支えることについて質問した。2人とも「ロッカールームには入る仕事はできないので残念ではあるけども、その他は(男子マネジャー)と同じように扱ってもらっている」との回答だった。

ここまででわかったことや推測したこと。

 A.米国大学の強豪フットボール部では、男子のマネジャーが中心で、女子には比較的狭き門であること。機会均等で能力主義による評価制を敷いているが、仕事の内容が重い荷物の運搬や練習補助中心になると女子は不利になる。また、選手も男子、マネジャーも男子が主流で長時間を過ごすため、そのような環境下でも、男子と協調しながらマネジャーをできる女子学生が求められている。

 B.連邦政府の資金援助を受けた公的公共機関では性によって機会の差別を受けないことを保障するタイトルⅨという法律がある。こちらの文章でもこれが話の中心になっていて、女子が高校野球の選手になる選択権を与えられずにマネジャーになっているとしたら問題であるとされている。https://note.mu/lingualina/n/n42ec2cba77d2 しかし、今回、調べることができた範囲では、強豪大学の男子運動部においては男子マネジャーが主流であり、このタイトルⅨがあることによって、逆に女子がマネジャーにつくことができるようになったのではないかと推測する。

 C.日本でもかつては男子運動部は女子禁制で、女子マネジャーのいない時代があった。日本では女子マネジャーが誕生し、浸透しつつあった時代に、運動部内で男子マネジャーには求めていなかった女性の伝統的な仕事や女性による癒しを求めていった。内助の功をたたえるような報道もその枠組みを再生しているのではないか。

  一方、米国の大学運動部のマネジャーとして女子が受け入れられるようになったとき、男子マネジャーと全く同じように仕事をすることが求められたのではないか。

 私個人の考え。

 私は選手だけでなく、スポーツが好きな人はいろいろな方法で関わることができるとよいと思っています。選手以外でもビデオ撮影やマネジャーなどとしてかかわるのは、スポーツが好きな子どもたちにとっては一体感や達成感を得られると思います。だから、女子マネジャーを否定したくありませんし、誰かに否定されたくもありません。

 もし、彼女らのストーリーが男子選手を支える内助の功に傾きすぎているのなら、もう少しそれをニュートラルな方向に持っていくことはできないか。男子生徒でもマネジャーとしてチームに関わりたいのに、そういった人が少ないので、結局やらないで終わってしまったらもったいない。

 今のプロスポーツ界でも選手だけでは興行できないのは周知のとおり。選手以外に優秀なスタッフがいるかどうかで、チームは大きく変わってきます。マネジャーは選手よりも下位の存在ではないし、女子選手が女子マネジャーより上位というわけでもありません。

 そういえば、アメリカの高校スポ―ツの規則のなかで、チアリーダーやマネジャーにも同じ規則を適用すると書いてあるところもありました。今日はここまで