『アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた』のかんそう文

 『アメリカの少年野球こんなに日本と違ってた』

 

アメリカの少年野球 こんなにニホント違ってた

アメリカの少年野球 こんなにニホント違ってた

 

 

 私は米国ミシガン州に住んでいて、上の息子が11歳、下の息子が9歳。二人ともトラベルチームでアイスホッケーをやっている。

 トラベルチームはトライアウトに受かった子どもだけで編成し、競技色が強い。ハウス(レク)チームは、トライアウトはなしで、全員を受け入れるのが基本。ハウスチームがあるので、スポーツをしたいのにどのチームでも受け入れてもらえないということは防げる仕組みになっている。

 うちの子どもたちは、野球については、お金と時間の都合で私がハウスチーム(この本ではレクチームとされている)で十分と考えていたのでトラベルチームのトライアウトには行っていなかった。

 この夏、日本から戻ってきた直後、私が時差ボケだった間に、二人は友達に誘われてトライアウトに行き、(それほどうまくないのに)受かったため、来シーズンから二人ともトラベルチームでやることになった。受かったことはうれしいけど、2種目ともトラベルチームに入り、2人分のお金と時間の都合をどうつけるのか、また、宿題さえもやる時間がないのではと思うと、やや気が重いのも事実。

 この本は、配偶者の米国駐在期間に息子さんがレクチーム、トラベルチーム、別のトラベルチームで野球をした記録。息子さんの9歳からの4年間となっているので、ちょうど、うちの子どもたちの現在の年齢に重なっている。

 書かれていることは、私にとって「あるある」のレベルを通り越して、まさに日常生活そのもの。いや~おもしろかったです。

 主にトラベルチームの話。子どもとはいえ、個人で競争していかなければいけないこと。子どもにとってのよりよい環境を求めて、指導者にもきっちり意見する保護者が少なくないこと。子どもがよりよいスポーツ環境を求めて別のチームにあっさりと移ること。タマに揉めたりして指導者がやめたりすること。父親で指導者も兼ねている人は、弁護士やコンサルタントのような専門職で時間とお金の都合がつく人が多いこと。などなど。

 私がアメリカでの子どものスポーツに感じていることとおんなじだ。

 親が情報収集しなければいけないこと。全体練習だけでなく、プライベートレッスンを受けるのが一般的なこと。そして、チーム(トラベルチームの場合デス)に貢献できない状態の選手は、子どもであれ、来シーズンの居場所は保障されていないこと。

 私の場合は現在進行形で、詳細を書ける状態でないこともあり、これまでツイッターには「今日はいろいろあった」とか書いていたのだけど、次回から「P138と類似問題発生」などとつぶやいたほうが、この本の読者の方に状況が分かっていただけるのではないかと思うほど。

 米国のユーススポーツはトライアウトをして、レベルごとにリーグを編成し、レギュラーシーズンは、同じようなレベルのチームと戦っていく。トライアウトに落ちてしまった子ども、何らかの都合でトラベルチームに入らない子どもたちにはハウス(レク)チームがある。

 子どものスポーツのトライアウトについては、私は以前にこういう記事を書いている。

高校のトライアウト

http://chikyumaru.net/?p=2327

 プライベートレッスンと塾産業について

http://chikyumaru.net/?p=2569

  私はつい否定的に見てしまって、書いたものまでネガティブなものになってしまうのだが、この本の読後感はとてもさわやかだ。

 そうだ。米国のユーススポーツは個人競争がし烈なだけではない。

  トライアウトで人数を制限するが、補欠を抱え込まず、できるだけ全員に出場機会を与えられるチーム編成になっている。

 1シーズンだけいっしょにプレーして、来シーズンは別のチームに移っていく友達。どういう理由でチームを移ったにしろ、アイスリンクであえば、再会をなつかしみ、近況を報告し合う。これを繰り返しているうちに、近隣の対戦チームのほとんどに友達がいることになり、人とのつながりが広がっていく。(うちのチームのトライアウトに来ないか?などというお誘いもこういった人とのネットワークが中心になっていると思う)

 この本は、私が子どもを通じて経験しているところの全容なのだけど、私の経験しているユーススポーツと違うところが2点あった。

 P157に、息子さんがトラベルチームに所属しながら、レクチームでも出場していたとある。

 ミシガン州アマチュアアイスホッケー協会(MAHA)では、4月から1カ月半ほどのスプリング(春季)は例外として、一人の選手が同一シーズンに、トラベルチームとハウスチームでプレーすることは認められていない。

 また、この本には2学年下のチームでプレーするポール少年の話が出てくる。

  下の年齢のチームに入るのは、私の子どもたちがプレーしている野球リーグでは認められていなかった。 私の子どもがプレーしていたリーグでは、チームは年齢ごとに区切って編成されている。自分よりも上の年齢のチームでプレーを希望する場合は、トライアウトで受かれば、チームの一員になれる。また、ハウス(レク)でも、テストの結果、全参加者の上位30%内の力があると評価されれば、本来より上の年齢のチームでプレーできる。(トラベルチームだと費用と時間がかかるため、家庭の都合で無理、というお子さんがいて、ハウスチームの1年上のチームに入り、大活躍している)。

  米国は広いし、各個別のリーグ、協会によって独自の規則がある。(高校野球の投球制限も州によってバラバラ)。それぞれのリーグや協会で、子どもたちがより楽しみ、より安全に、技術向上できるように知恵を絞っていて、規則も頻繁に変わる。

 あれ、なんか中途半端な終わり方になってしまったが。日本語で書かれたこの本によって、私の体験していることや感じていることが、私だけでないと実感できて本当によかった!