部活動は教員の仕事か、米国編

以下の文章は1991年発行のThe Law and Teacher Employmentという本の

46ページに書かれていた内容を、私が日本語訳したものです。

課外活動の指導がより求められるようになっているが、個人の関心、職業との関連が薄いものや、報酬が少なくなっている。教員たちはこれらは法的に求められる仕事かどうかと疑問を持つようになった。

なんだか、今、日本で問題になっていることとよく似ているのではないでしょうか。教員の仕事が多すぎることが問題になっていて、その理由のひとつに部活動指導が挙げられています。そういったこともあり、部活動指導は教員の仕事か否かという議論が広がっています。

日本の法律では、教員には原則として時間外勤務を命令することはできないそうです。超勤4項目(初めてこの言葉を聞いた人は検索してくださいね)として時間外勤務の例外はあるのですが、ここに勤務時間外の部活動指導は含まれていません。法律としては、管理職は教員に部活動指導を依頼することはできますが、命令することはできないのです。

日本と同じように学校運動部のある米国では、運動部活動の指導は教員の仕事であるとみなされているのでしょうか。

法律的には微妙です。ただし、現実的には雇用主である学校区(教育委員会に相当する)と教員の契約により、学校運動部活動が教員の仕事かどうかをそれぞれに規定しているようです。


米国の場合は、過去の裁判の判例から、時間外の仕事は教員の仕事の一部として学校区や管理職が仕事を割り当てることができるとされています。けれども、条件がつき、過去の裁判の判例からその教員の専門や興味関心に近いもので、適切な時間量となっています。

これは私の推測ですが、音楽教員が年に2,3度ある週末の発表会や夜の時間帯の発表会の指導は引き受けなければいけないのだと思います。もしくは、理科の教員が週1回、1時間の理科クラブの顧問を依頼されれば、これも引き受けなければいけないのかもしれません。しかし、裁判の判例ではどんな仕事を、何時間まで、とは決められていませんので、法廷で「この課外活動は教員の仕事か否か」を争うときには、それぞれの個別の状況を見るのだと思います。先に法律的に微妙と書いたのは、このような理由からです。

また、教員が誰からも強制される状況がなく、自発的に課外の部活動の指導をするにあたっては法律上は無報酬のボランティアで引き受けることも可能です。しかし、いつも給与を得ている仕事を無報酬のボランティアですることはできない、となっています。スクールバスの運転手がボランティアとしてスクールバスの運転手として時間外の対外試合の運転を引き受けることはできない、ということですね。

部活動の指導は教員の仕事か否か。

前述したThe Law and Teacher Employmentから、まとめます。

法の原則
1,法的義務
 契約事項にエクストラな仕事(部活動を含む)についての合意事項がない場合、過去の判例と実践から、その教員の専門性に近く、理にかなった時間量の場合は、その教員はエクストラな仕事を引き受ける義務がある。

2,仕事のカテゴリーわけ
 裁判ではエクストラな仕事を2つの種類に分ける傾向がある。(1)教員の専門知識から遠い活動(2)活動内容が教えている内容に近く関係しており、学級での活動と近い。

3,教員の専門性に関連しない仕事
 一般的なルールとして、契約の条件に含まれていない限り、教員の専門性に関連のないエクストラな仕事を教員に求めることはできない。一部の裁判では、専門性に関連しないエクストラな仕事については学校区と教員の契約と、この仕事の割り当てを教員が受ける法的義務があるかないかを見る。

4,補助的な契約は拒否できる。
 教員と学校区との契約は主な契約と、補助的な契約があるケースが多い。主な契約は教員の正規の時間内の仕事に関する契約で、補助的な契約は課外活動の指導など、エクストラな仕事についての契約である。教員は主な契約を維持したまま、補助的な契約は拒否することはできる。
つまり、補助的な契約≒課外活動の指導を拒否しても、教員として雇用されるということ。学校区によっては、主な契約のほうに運動部活動の指導を盛り込んでいることもあるようです。例えば、体育教員の契約には運動部活動の指導を主契約に盛り込んでいるなど。

 

30年前の本の引用なので、もしかしたら、変更している部分はあるかもしれないと思い、2012年発行のThe 200 Most Frequently Asked Legal Questions for Educatorsでも調べたのですが、課外活動の指導は教員の仕事かについての見解は、1991年発行のものと同じでした。細かいところは変化があるかもしれませんので、これについては今後の課題とします。