昔、選手の試合前の準備ということで、考えたことあったなあ。なんやったけ、と。
思い出しました。女子サッカー米国代表選手が、子どもを連れて、遠征に行っているという話。
2012年のLAタイムズ
http://articles.latimes.com/2012/jun/24/sports/la-sp-oly-soccer-nanny-20120624
米国の女子サッカーチームは、子どもを出産後も現役を続けている選手がいて、選手は遠征先にも子どもを連れてきているというのです。選手がトレーニングやトーナメント遠征に子どもを連れてくるようになったのは1996年から。女子プロゴルフLPGAのモデルを参考にしたそうです。
いくら遠征先に子どもを連れてくるといっても、母親である選手が子どもの世話に追われていたのでは、試合に集中するどころか、試合に出場することもできません。そこで、チームは、ナニー(乳母とかベビーシッター)プログラムを用意。選手が同伴させるベビーシッター(選手の知り合いか、家族、親せきなどのケースが多いみたいです)の遠征に伴う経費を、チームが負担するそうです。(もしかしたら、チームつきのスポンサーか何かあるのかも、未確認)
このプログラムの利点は
① 才能ある選手が、出産・育児のために、代表から引退することを引き留めるのに役立つ。
② 選手は子どもと過ごす時間が増える。
などが挙げられています。
しかし、チームの宿泊施設のなかに子どもが存在することは、他のチームメートや関係者に迷惑がかかるのではないかという懸念もあったようです。また、夜中に授乳したり、子どもに起こされたりして、試合に備えるために来ているのに、ゆっくり休むことができないとも。
90年代に、子どもを遠征先に連れてくることができるように、ベビーシッター代の負担を交渉したのはジョイ・フォーセットとカーラ・オバーベック。彼女らの交渉先となった米サッカー連盟は当時、遠征に帯同するベビーシッターの費用として5万ドルの予算を充てたとあります。様々な職場で女性の社員、職員の権利が主張できるようになった時代背景も大きいかと思います。
1999年のニューヨークタイムズ紙によると、2人は交渉する以前から、友人や彼女らの母らに遠征についてきてもらい、ベビーシッターをしてもらっていて、旅費、宿泊費、食事代も自分たちで負担していたとあります。
LAタイムズの記事では、最初に交渉し、代表選手として長く活躍したジョイ・フォーセットが現役時代を振り返る形で、夜も子どもの世話をして疲れたこと、それ以上に他の人に受け入れられるのかという心配があったことが書かれています。
結果的にチームの他の選手にも受け入れられたという話。選手たちは家族や自宅から離れて過ごす時間がないので、子どもたちと遊ぶのは楽しいようだと。歴代2位の得点を挙げているワンバックは、ベビーシッターではナンバーワンですと自分で主張しているといったちょっとしたジョークも。
昔、プロゴルフの取材をしていたときに、ジュリ・インクスター(当時38歳)が優勝したことがありました。当時、確か子どもが2人いたはずですが、私が取材したシーズンは絶好調。米国人の記者も聞いていました。「今日、お子さんはどうしていますか」と。たぶん一人がソフトボールの試合にいき、もう一人は別の行事か何かに行っている。試合会場には来ていないといった話でした。小学生になれば、子ども自身が忙しくなり、親の試合について来ることができない場合もあるかと思います。インクスターは、子どもの面倒を見てもらえる人たち(家族や実家、知り合いといった感じでした)でチームを作り、自分が世話をできないときは、そのチームの中から都合のつく人を探すと言っていました。
そのとき、私は26歳ぐらい。子持ちで快進撃を続けるインクスターは、えらく貫禄があるように見えて「38歳のベテラン」みたいな記事を書きました。(思えば遠くへ来たもんだ)。
子持ちの男性選手の場合は、なかなか「今日はお子さんはどうしてますか」という質問はあんまりないでしょうねえ。よほど、毎日のように試合会場に来ているとか、メディアが好む特別なストーリーがあるとかだったらベツでしょうが。
こちらに最近のLPGAの記事が。 http://sportsnavi.yahoo.co.jp/sports/golf/all/2013/columndtl/201307050001-spnavi
チームスポーツで、子どもを連れてチーム宿舎の中へ入れば、「きれいごと」では済まないこともあるかといらぬ心配も一応します。私もおばちゃんですから。
ただ、アメリカというところは、集団スポーツであっても、集団練習、試合当日のときに、きちっと代表選手として力を出してくれれば、あとは個人の判断でよろしく~みたいなところがあるのではないでしょうか。
米女子サッカー代表は、子とナニー(ベビーシッター)を連れて遠征に行くということを、当然の権利として連盟とサッカーが受け入れ、支援して、何人もの選手がやってきたという事実。この重みは、仮に子連れ遠征を不快に思う人がいたとしても、覆したり、ひっくり返したりできないものになっているのではないかとも思います。